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第31回国際喘息学会日本・北アジア部会

ご挨拶

第31回国際喘息学会日本・北アジア部会
会長 相良 博典
昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門

 この度、第31回国際喘息学会日本・北アジア部会の会長を拝命いたしました。伝統あるこの学会を東京都品川区旗の台で主催させて頂くこととなりました。
 本会のテーマは「喘息の基礎を見つめなおし、精緻な喘息治療の実現へ(Re-evaluating asthma basics for enhancing quality of care)」としました。本邦では、喘息に関連する基礎的研究が伝統的に進められてきました。そして、その果実として複数の分子標的治療薬が開発・承認され、疾患を有する国民がその恩恵を享受しております。一方で、軽症から重症喘息患者における治療の根幹は現在も吸入ステロイドです。先の革新的な分子標的薬が効果を発揮するためにも、治療の土台である吸入ステロイドがしっかりと効果を示していることを確認しなくてはいけません。よって、基礎的研究や臨床の基本を見直すことで、新規に開発された治療薬の有効性は高まり、新たな治療薬の開発に結びつくものと考えられます。
 現在、使用できる分子標的薬の一部は在宅自己注射が可能であり、患者視線では治療薬の利便性が向上しています。一方で、医療提供者側は在宅自己注射を実施するにあたり、指導方法や病状の管理方法など新たな技術を習得する必要性に迫られております。また、在宅で自己注射を実施する際には、在宅自己注射指導管理料が算定可能であり、医療経営の側面においても変化をもたらしています。そして、分子標的薬のみならず吸入剤などにおいても、禁煙療法等でみられるようなアプリケーション(アプリ)の開発により、重症喘息患者の病態把握や治療効果は格段と向上することが期待されています。ここでも、基本に立ち返り、喘息の医療を見つめなおすことで、現行の改善や新たな発見のきっかけが生まれ、革新的な治療につながることが感じられます。
 一方で、世界に先駆けてわが国では高齢化が進行しており、65歳以上の人口に対する割合が約3割に迫るところまで来ております。重症喘息患者像も異なってきており、フレイルやサルコペニアなど、従来とは異なる視点で病態の解釈や治療の工夫が必要な時代に入ってきております。また、SARS-CoV-2感染症の流行は、感染者のみならず、患者の生活や医療提供体制に劇的な変化をもたらし、同感染症は環境因子的な側面も合わせ備えています。先に紹介した分子標的薬などの新規薬剤やアプリなどの開発を通じて、患者因子や環境因子が変化してもより有効で、安全で、盤石な医療を提供できるものと考えられます。勿論、更なる治療介入のためには診断のための検査体制の確立が重要であることは言うまでもありません。
 わが国では皆保険制度が樹立されており、我々の健康に多大な恩恵をもたらしていると同時に多くの医学的エビデンスを生み出しています。アジア圏に所属する国外の地域とそれらの技術や知見を共有することにより、ともに新たな価値が発見されることを期待しております。また、多様性豊かな近隣諸国との協同は、互いの「力」の源泉になるものでもあります。
 本学会は上記に紹介した複数の視点や視線を具現化するために企画されております。それらを実現するために、国内外の先駆的な研究者を招聘し講演会を企画しました。また、会員の皆様からは多数の演題をご登録いただき、発表や意見交換を通じて「点と点が結びつき、最終的には面を形成すること」を願っております。そのような観点から、本学会を開催したいと考えております。
 東京都や品川区には、数えきれないほどの観光名所と美味しいレストランがあります。また、時代の先端を行くアイデアが合わさることにより、新しい文化が日々生まれています。どうか、その息吹を感じながら、学会に参加して頂ければ幸いです。多数の皆様のご参加をお待ち申し上げております。

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